映画『望み』
観終えた後は、すごくエネルギーを使いました。
憔悴してしまった。
映画『望み』
【あらすじ】
一級建築士の石川一登と校正者の妻・貴代美は、高校生の息子・規士や中学生の娘・雅とともに、スタイリッシュな高級邸宅で平和に暮らしていた。
規士は怪我でサッカー部を辞めて以来、遊び仲間が増え無断外泊することが多くなっていた。
ある日、規士が家を出たきり帰ってこなくなり、連絡すら途絶えてしまう。
やがて、規士の同級生が殺害されたニュースが流れる。
警察によると、規士が事件に関与している可能性が高いという。
行方不明となっているのは3人で、そのうち犯人と見られる逃走中の少年は2人。
規士の行方は?
何故逃亡しているのか?
家族それぞれの思う『望み』が交錯するサスペンスドラマ。
【この作品について】
読書家のためのブックレビューサイトのアンケートにて、読者満足度100%を獲得した、20万部超えの雫井脩介さんの同名ベストセラー小説を映画化したサスペンスドラマ。
堤幸彦監督と堤真一さんが初タッグを組み、堤さんの妻役として、石田ゆり子さん。
2人の子供役として、高校生の兄を演じるのは岡田健史さん、受験生の妹役を清原果耶さんが演じています。
【この作品を観た感想】
冒頭から、理想の家族が登場して、素敵だなーと思いながら観ていました。
生活水準も高そうで、ルックスも素敵な一家。
だけれども、特にそれを鼻にかけない、理想の家族。
そんな家族が、ニュースなどで見聞きするような、少年犯罪の渦中に巻き込まれていきます。
その過程が、ゆっくりと丁寧に残酷に描かれている作品です。
息子が不審な行動を取り、家を出たきり連絡が付かなくなり…
そこからは、ずっと私も緊張しながら映画を観ていました。
冷静であろうとする父親と、不安に駆られる母親。
突然、未来を奪われた妹。
理想の一家を、更に追い詰めるマスメディア。
それに煽られて暴走する、周りの人々。
一度疑いが掛けられてしまうと、ご近所さんを始め、仕事や学校などを含むそれぞれの居場所が蝕まれていく恐怖は凄まじかったです。
特に、地域に密着しているような生活だと尚更。
当然のことながら、父親から見た息子、母親から見た息子、妹から見た兄、他人から見た彼は全て違っていて、それぞれが彼に対する『望み』を持ち始めます。
置かれている環境や、彼への印象、時間の経過と共に、少しずつその『望み』の形は変わっていくように感じました。
長年連れ添っている夫婦でも、息子への『望み』は統一出来ず、兄への『望み』の形に苦悩する妹も、観ていて辛かったです。
それぞれの『望み』が同じになるのが、家族としては安定することなのかもしれないですが、それは一生をかけても無理な話なのかもしれないと思いました。
映画として切り取られていた期間としては、1週間ちょっとの話だったような気がしますが、彼が行方不明になってからは、淀みがあるような重苦しい空気感がスクリーン越しに伝わってきました。
両親役の堤真一さんや石田ゆり子さんが、段々憔悴していく感じもあり、本当に役者さんは凄いですよね。
普段の家庭での食事は、手作りでキチンとしたものが食卓に並んでいましたが、事件が起きてからというもの、出来合いのものばかりが出ていて、こういった演出も胸がザワザワしました。
息子が『非行に走るかもしれない』予兆があったり、思春期ならではの息子との距離の取り方が難しかったり…
息子への接し方に戸惑う一家ですが、そんな雰囲気を一掃するかのように、明るく家族に接する娘の雅がとても可愛らしかったです。
受験という人生の岐路に立ちながら、突然降り掛かった事件に翻弄され、戸惑う雅の姿には胸が痛みました。
私は初見だったかもしれない、清原果耶さん。
ハツラツとした、素敵な女優さんでした。
息子役の規士を演じた岡田健史くんも、とても良かったです。
仄暗い感じ、似合いますね。
最近、『MIU404』の九重くんを観ていたので、ギャップが凄かったです。
ラストは、息を呑みました。
この頃には私も憔悴して、呆然としてしまいました。
息子は生きているのか、いないのか。
息子は殺人犯なのか、被害者なのか。
彼は、どんな子供だったのか。
このところは、何を思っていたのか。
彼をどこまで信じられるか。
どんな彼なら信じたいのか。
息子の立ち位置によって、今後の彼も、家族も状況が全く変わってくる。
実母が今でも言いますが、家族に迷惑を掛けるようなことをすると、家族の人生まで変えることになると。
父親も母親も妹も、どの『望み』も正しい。
きっと正解はない。
ネタバレが嫌なので書きませんが、印象に残ったセリフも数多くありました。
どんな結末になっても恐らくですが、私はしんどかったですね。
なので、安易にオススメすることは出来ないのですが、ある家族の『望み』の話、一度観てみて下さい。
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